「ムシの日」にあたりこの業界を語る座談会

ムシの日座談会 2021

きょう6月4日は「ムシの日」。毎年、7月4日までを「ムシナシ月間」として、さまざまな啓蒙活動が展開される。 人の生活に不快感や害をもたらすダニや蚊などの小さな生き物から、ハクビシンやアライグマといった農業に被害を及ぼす大きな生き物の駆除、 さらに新型コロナウイルス感染拡大に伴う消毒業務など守備範囲は広い。 こうした活動を行う団体、公益社団法人愛知県ペストコントロール協会(坂倉弘康会長、クラーク社長)と行政の代表者にお集まりいただき話を聞いた。

参加してくださった方

当協会 会長
 
 
坂倉 弘康 氏
名古屋市健康福祉局・名古屋市保健所 健康部環境薬務課環境衛生係 係長
森 徹氏
愛知県保健医療局生活衛生部生活衛生課 課長補佐(環境衛生グループ)
三浦 冴子氏
当協会 総ブロック長
 
 
森 延博氏
当協会 会長
坂倉 弘康 氏
名古屋市健康福祉局・名古屋市保健所 健康部環境薬務課環境衛生係 係長
森 徹氏
愛知県保健医療局生活衛生部生活衛生課 課長補佐(環境衛生グループ)
三浦 冴子氏
当協会 総ブロック長
森 延博氏

坂倉:当協会は1968年(昭和43年)の設立以来、人に有害な生物の防除と感染症予防を通じ、県民の皆様の公衆衛生及び福祉の向上に努めています。 世界デザイン博、愛・地球博の会場管理や鳥インフルエンザ、豚熱の発生に伴う車両消毒作業等、専門性を生かして社会の要請に応えてまいりました。 同時に大規模災害への対応にも力を入れ、平成20年には岡崎豪雨被災地の防疫消毒を行い、 東日本大震災の際は公益社団法人日本ペストコントロール協会の連携会員として被災地でハエの防除作業に携わりました。
現在、愛知県内27市町村と「災害等発生時における防疫活動の協力に関する協定」を締結、7ブロックが主体となって役割を担っています。 昨年から続く新型コロナウイルス感染症のまん延に伴って爆発的に高まった施設消毒の要請にも全力で応えているところです。

 

―新型コロナウイルス感染症は業界、行政にどのような影響を及ぼしていますか。

 
森(協会) 契約先施設の休廃業によって厳しい影響を受けている側面がある半面、半世紀前から消毒業務をなりわいとして技術向上に取り組んできたことが社会から認められ、 感染ピーク時には保健所からの紹介や直接的な施設消毒要請を頂き、会員によっては休日返上で対応に当たっています。 行政に対しては早い段階で新型コロナウイルス感染対策講習会を開催するなど、私どもが持つ専門性を提供できたのではないでしょうか。

 

 
三浦:感染症対策の最前線となっている保健所では、積極的な疫学調査や濃厚接触者の健康観察など非常に多くの業務を抱え、 職員が一丸となって取り組む日々が続いています。 県民の健康を守ることを最優先に新型コロナウイルス対策に当たるため、やむを得ず一部の啓発事業、調査事業を縮小・休止している状況です。

 

 
森(名古屋市) 名古屋市も保健所が一丸となって感染症に対する取り組みを行っています。 人を集めた講習会を開催することが難しい中、どのように衛生害虫に関する啓発を行うか苦慮しています。 感染の流行当初は施設への立ち入り調査が難しい時期もあり、新型コロナ感染症の影響は非常に大きなものがあると感じています。

 

―コロナ禍での協会の取り組みは。

 
坂倉例年開催している6月4日の「ムシの日」のイベントは、昨年に引き続き中止せざるを得ません。 一方、大学生向けの情報発信の場である「ペストコントロールカレッジ」は、Web開催も含めて検討中です。 未来を担う若い世代への情報発信は、ニューノーマルな形を模索しながら続けてまいります。 新型コロナにばかり目が行きがちですが、実は蚊媒介感染症の危険にも直面しています。
デング熱の発生も記憶に新しいところですし、西ナイル熱はいつ日本に入ってきてもおかしくない状況です。 6月4日から7月4日までの「ムシナシ月間」を、ご家庭や施設で衛生害虫への対処を考える期間と捉え意識を高めていただけたらと思います。

 

―協会に寄せられた相談件数と概要を教えてください。

 
森(協会) 昨年度の相談件数は1882件(前年度1432件)で、うち新型コロナの消毒依頼が162件でした。 有害動物の駆除依頼はアライグマ、ハクビシン、ヌートリアが相変わらず多いのですが、イエコウモリとイタチといった、 昔は人里から少し離れたところに住んでいた生き物の駆除や侵入防止依頼も増えています。

 

―2018年(平成30年)には「防疫隊48(フォーティーエイト)」が誕生しました。

 
森(協会) ブロック間の情報交換や機動性を高めるため平成30年度に総ブロック会を設立。 ブロックごとに編成した48の防疫隊を「防疫隊48」と命名しました。市町村をまたぐ大規模な災害時にはブロック間の応援体制を整えて対応しています。
昨年9月には北名古屋市の要請により、災害時に近隣の介護施設でコロナ感染者が出たという想定で施設消毒の訓練展示を実施しました。 市町村と一体となって災害時講習会や実技講習会も行っています。

 

―行政から協会に望むことは。

 
三浦愛知県では、IPM(総合的有害生物管理)に基づく防除方法の普及・定着に取り組んでいます。 引き続き防除技術の向上と技術者の育成に尽力いただくことを期待しています。 「防疫隊48」や「感染症予防衛生隊(TEAMS)」等、協会の精力的な活動は大変心強く感じています。 平成30年3月に「感染症発生時における消毒業務に関する協定」を締結いただいておりますので、有事の際にはご協力をお願いいたします。

 

 
森(名古屋市) 名古屋市も平成25年に協会と「災害等発生時における防疫活動の協力に関する協定」を締結しています。 平成12年の東海豪雨や平成20年8月の豪雨では、名古屋市内でも広範囲に水害が発生しました。 大規模な水害はいつ起きてもおかしくない状況にあります。行政の職員だけでは対応し切れない部分も出てまいりますので、ぜひともご協力をお願いいたします。

 

最後に会長から一言。

 
坂倉:有事の際に重要なのが初動対応です。協定を締結していただいている自治体と私どもとの平時のコミュニケーションを、防疫消毒訓練等を通して積み重ねてまいります。

 

―ありがとうございました。

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