きょう6月4日は「ムシの日」。日本ペストコントロール協会は毎年7月4日までを「ムシなし月間」として害虫・害獣駆除の強化月間として定め啓蒙活動を展開する。人の生活に害や不快感をもたらすハチやダニ、ネズミなどの小さな生き物からハクビシンなど農業に被害を及ぼす大型獣の駆除など守備範囲は広い。こうした活動を行う団体である公益社団法人愛知県ペストコントロール協会は20年前の万博時にその専門性から環境保護と来場者の安全を守るため尽力した経験を持つ。そこから20年たち、来年はアジア大会を控えた今、当時を振り返るとともに協会と行政の代表者に現状と今後の課題を聞いた。
市岡:私ども愛知県ペストコントロール協会は、正会員70社、賛助会員12社の計82社(2025年4月現在)で、有害生物の防除や感染症対策を通じ、市民・県民の皆様の公衆衛生及び福祉の向上に努めています。
2024年度に寄せられた、ねずみ・害虫などに関する相談件数は1979件(前年度1859件)でした。ハチ類に関する相談が943件(同861件)で、9・5%増となっています。アライグマ、ハクビシン、イタチなどの有害動物に関する相談は前年並みの126件でした。
川合:今年は6月14日(土)に昨年と同じ愛・地球博記念公園内の三日月広場で「ムシの日イベント」を開催します。大道芸や親子で楽しめるゲーム、昆虫標本の展示も行います。相談窓口を設け、虫に対する悩みを伺い、対策をお伝えします。
協会では、ねずみ・害虫等の防除技術の向上に関する事業として、さまざまな研修会を行っています。愛知県および県内の29市町村と災害発生時における防疫活動等の協定を締結、災害時の対策に関する技術指導や研修会を実施しています。
三宅:愛知県では、市町村で行われる健康まつりなどのイベントを利用して、ダニや衛生害虫などのパネルや標本などの展示を行い、県民の皆様への知識普及を図っています。実際に生きたダニなどを見ることをきっかけに、住環境について興味を持たれることが多く、駆除の方法を知りたいという方には協会を紹介させていただいています。
人の健康と環境にやさしいねずみ・昆虫等対策として、IPM(総合的有害生物管理)に基づく管理方法の普及を進めています。建築物などの施設の所有者や管理者に対して、監視指導や研修会を通じ、啓発を行っています。
本県では、2008年3月に「県有施設における農薬・殺虫剤等薬剤適正使用ガイドライン」を定め、毎年度ガイドラインの遵守状況の確認や、公共施設の管理担当者を対象とした研修会を開催しています。県有施設における管理者の方には、IPMの考え方が浸透してきていると感じています。
尾原:名古屋市に寄せられる相談で圧倒的に多いのがハチに関することということもあり、毎年、スズメバチ類危害防止運動を実施しています。蚊については、平成26年にデング熱の国内感染事例が報告され話題になりましたが、毎年、地域の掲示板にポスターを掲示し、防除に関する講習会も開催しています。
名古屋市では、衛生害虫についての正しい知識を身につけていただくために正しい情報の発信を心掛けています。衛生害虫の情報は、名古屋市の公式ウェブサイトにも掲載していますし、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)等を媒介するマダニについては啓発動画をSNSなどで発信したりしています。
三宅:虫に関する相談は、2020年度28件、21年度が15件、22年度9件、23年度34件、24年度は38件でした。トコジラミに関しては、23年度が4件、24年度は7件と増加しています。
尾原:名古屋市は2020年度が2068件、21年度1816件、22年度2126件、23年度が1584件、24年度は12月末までで1453件です。内訳は、5~6割がハチに関する相談です。
川合:万博開催前に有害生物の生息調査を2回にわたって実施、期間中も調査を行いながら管理を行いました。毎日トラップを仕掛け、種類や頭数をカウントして報告書として残しました。環境博ということで、IPMの理念のもと薬剤の使用は極力避け、定期的な調査を実施しつつ一時的に増えたところに対してのみ対応しました。来場者の目に触れることのない業務でしたが、有害生物による人命に関わる事故の発生もなく無事に終えることができました。
川合:薬剤を使用する場合は、適材適所に適量をということです。現在、いろいろなベイト剤が増えています。一般家庭であれば、市販品を有効活動して、日頃から防除をしていただくのもよいでしょう。業者に依頼する場合は、複数社から見積もりを取ることをお勧めします。
市岡:愛知万博では、協会員が刺激し合いながら取り組みました。現在もそれぞれの得意分野を生かしながら常に皆さんと一緒にいろいろな問題を解決しています。
協会はブロック制をとっていますので、一つのブロックが動けなくなったときは隣のブロックが応援に駆け付けます。中部地区本部7県(愛知、岐阜、三重、静岡、福井、石川、富山)における相互応援の協定も結んでいますので、安心していただきたいと思います。
三宅:今年1月に知多半島で高病原性鳥インフルエンザが発生した際、協会の皆様には、感染防止対策と拡大防止のためにご尽力いただきました。厚く御礼申し上げます。協会では、災害時に防疫活動に迅速に対応するために「防疫隊48」を、緊急時の感染症対策に対応するために「感染症予防衛生隊」を編成しておられ、大変心強く感じています。愛知県においても、2018年3月に「感染症発生時における消毒業務に関する協定」を締結しています。引き続き有事の際にはご協力をお願いいたします。
尾原:来年は愛知・名古屋でアジア・アジアパラ競技大会が開催されます。一番懸念しているのはアジア地域で多いデング熱の感染です。名古屋市は、平成25年に協会と災害時の防疫活動の協力協定を締結しています。万が一発生した場合には、蚊の駆除などでご協力いただくことになります。今後も常に情報を共有してまいりたいと思います。
6月4日は「ムシの日」 7月4日まで「ムシなし月間」